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スポット測光を実際に使ってみる(写真・映像修行記 #28)

スポット測光を使ってみようとして、検索してみると、実際に効果がわかりやすい例が少ない。だから、効果がある使い方を分析してみて実際に作例を用意してみた。特にCanon EOS80Dでの使い方をまとめています。

スポット測光と評価測光、あるいはマルチパターン測光

今回の場合は、Canon EOS 80Dを使って検証していますが、スポット測光はNikon D7200でもありますし、使い方の原則は変わらないですね。一般的に使われるのはCanonでは評価測光, Nikonではマルチパターン測光というものがあって、デジタル一眼ではデフォルトで使うとよい測光形式です。

だからといって完璧なものではないのです。次の例を参考にしてください。

こちらは評価測光を使っています。撮影データはCanon EOS 80D + EF-S 18-135mm
f/3.5-5.6 IS USM (27mm) f/9 1/50 ISO 800 絞り優先オート CP-Lフィルタを使ってます。

こちらはCanonのカメラなので評価測光を使ったものです。基本的にNikonのマルチパターン測光でも同じですね。明るいところがオーバー気味に撮れていますが、画面いっぱいの測光からの露出計算によるものなので、影の部分に露出の計算が引っ張られて、明るいところがオーバー気味に計測される結果です。だから全体的に白っぽくなってしまう。

こちらはスポット測光を使っています。撮影データはCanon EOS 80D + EF-S 18-135mm
f/3.5-5.6 IS USM (20mm) f/9 1/30 ISO 200 絞り優先オート CP-Lフィルタを使ってます。

これはスポット測光を単純に利用した例です。つまり、中央の面積で1.6%にあたる領域の測光結果を利用したものです。スポット測光を選ぶとファインダーをのぞいた時の中央にサークルが現れるので、そのサークル内が測光される範囲なのです。

2つの写真を見てもわかるように、スポット測光では上部の影の部分は含まれない。明るい部分の茶畑で適正露出を出してるために、オーバー気味にならなくなっていて、影の部分も黒が引き締まって見えるのです。この場合はCP-L(円偏光フィルタ;CP-Lは別記事を作る予定です。)を利用してるので、色乗りは通常の状態よりはよくしています。

2つとも現像時(ライトルーム)を使ってますが、撮影データをそのまま使っています。つまり、無加工です。二つは焦点距離が若干違う(27mm,20mm)ですが同じ時に撮っています。

つまり、スポット測光は影の部分と明るい部分のコントラストが強いときに適切に使うと効果が発揮されるということです。

スポット測光の作例

その1

撮影データはCanon EOS 80D + EF-S 18-135mm
f/3.5-5.6 IS USM (35mm) f/9 1/100 ISO 100 絞り優先オート CP-Lフィルタを使ってます。DPP4で現像していて、水平を修正してる以外は元データのままです。

上記の写真はスポット測光をするときに、屋根の光が当たってる部分にカメラを向けて撮影しています。見ての通り屋根に適正露出が来てるので背景をアンダー気味の暗い状態になります。

上記のオブジェクトのように古びてざらざらしたものだったら、より効果が出てきてるように思えます。実はこのデータは上のほうに太陽のゴーストがすこしはいっています。あまり目立たないです。

上記と同じデータです。今回はライトルームにて白黒現像(白黒 風景のプリセット)をしています。

光と影のコントラストがよくなるので白黒撮影とスポット測光の相性はかなりよさそうです。上記のように白黒写真として現像する場合にすごく味があるものになりますね。

その2

撮影データはCanon EOS 80D + EF-S 18-135mm
f/3.5-5.6 IS USM (78mm) f/9 1/250 ISO 250 絞り優先オート CP-Lフィルタを使ってます。DPP4で現像していて、水平を修正 とほんの少しトリミング してる以外は元データのままです。

これは作例その1の屋根の部分のみなのですが、少し位置を変えた撮影です。スポット測光で適正露出にしてるために屋根の凹凸が大変わかりやすいんですね。屋根のトップの帽子がもっと派手な色だったら面白かったかも。背景が黒く引き締まって屋根に適正露出になってるために味のあるものになってますね。これが評価測光を使うと最初の説明で見せたように背景が持ち上がって屋根の露出がオーバーになりますから、このようなシックな見え味にするのはむつかしいです。

この時は135mmまでズームインさせて、屋根の右の明るい部分を使って測光して、78mmまでズームアウトして撮影しています。これも当然白黒に向いているので、白黒版にすると次のようになります。

データは1枚目と同じです。現像はライトルームのプリセット”白黒 風景”をつかってます。特に細かな修正は水平だしとトリミングのみです。

背景が黒いので写真が引き締まって見えますし、ビューアーの視点でもしっかり屋根にフォーカスできますね。

スポット測光を使うときのコツ

ポイントは次の通りです。マニュアルで利用するのもよいですが、測光が中央で行うことしかできないので、AEロックやAFロックをうまく使って、絞り優先オートを使うと煩わしさはマニュアルほどではなくなります。手順は次の通りです。(Canonの上位機やD7200などNikonのスポット測光はAFエリアと連動しているので、EOS 80Dのほうがこのようなよりマニュアル的な操作になります。D7200のスポット測光は別記事を考えてみます。)

  • レンズをズームインさせて光ってる部分でスポット測光をします。先に書いたように、ファインダーを覗くと、スポット測光のサークルがあるので、その部分に光ってる部分を満たすのです。(暗くなってる部分は入れてはいけません。理由は後述します。)
  • 次にAEロックをします。*やAELといったボタンを使うのです。カメラによって違うので調べてみてください。EOS 80Dでは*ボタンを押すと、ファインダー内では露出データのところに*が表示されます。
  • 次にズームアウトして、構図を整えて、次は適度なところにシャッター半押しあるいはAFロックしてみます。
  • 最後に撮影します。この動作に時間がかかるとAEロックが外れることがあるので、外れた場合は最初からやり直しです。

書き方はズームレンズを意識して書いています。便利ズームのほうがスポット測光は格段に使いやすいんだなと感じています。

スポット測光を使う際の注意

スポット測光は当然狭い範囲を測るのですが、その狭い範囲(中央のサークル)に測光したい部分の周辺の影の部分を入れないように注意するってことです。狭い範囲を計測するために影が入ると、適正露出の計算が変化しやすいのです。つまり使い方を誤るとピーキーで不安定な露出になるということなのです。

ズームレンズならば望遠側にズームしてやることで、スポット測光の範囲が狭められるので、スポット光の均一な部分を使って計測できる利点がありますね。均一な光を計測できない場合は、自身を前に移動して、測光部分の邪魔な部分を取り除くといことです。

また、色によって適正露出がずれることがあることも知っておく必要があります。スポット測光では基準になる18%グレーに合うような露出計算をするので、明るすぎる色はアンダー気味、黒すぎる色はオーバー気味に表現されるからです。この点は経験による補正となります。これは扱いが難しくなる原因です。Art Wolfe (2013) の本 (リンクはアマゾン)では18%グレーの場所を探せと書いてるくらいこの明るさの感覚が露出を決めることにかなり重要だってことです。色ごとの補正量についてはtin_box (2006) のブログで調べられてるから、わかりづらい場合そちらを参考にして感覚をつかむとよいでしょう。

感想

スポット測光を本格的に使い始めて間がないのですが、スポットを使うと光を読むことへの意識が格段に向上するので、窓とカーテンの隙間からもれる光とかそんなもので遊んだりしてしまいます。見ての通り通常の測光形式と表現力が違うし引き締まったものになるので、撮影がより楽しくなるという利点があります。

ちなみに部分測光はスポット測光よりもう少し広範囲ですが、もう少し陰の部分を持ち上げたいときに利用します。測光面積がスポット測光より大きくなるので、スポット測光よりはマイルドな扱いかな。使いこなしは測光範囲の明暗の比率は意識しないといけないのは代わりありません。

参考

  1. Wolfe, Art , M.Hill & T.Grey (2013) The New Art of Photographing Nature, Amphoto books, pp.140
  2. tin_box (2006) スポット測光による色別反射率の考察。(ブリキの箱), tinbox.exblog.jp/2941080/

最終更新日 : 2021-01-24