階調表現に優れた珍しいJPEG現像ソフトのSILKYPIX JPEG Photography 10の製品紹介です。作品サンプルを示しながらレビュー紹介してみます。
階調表現は結構細かいところまで再現できるのが特徴です。その他スポッティングツールなどもかんたんな利用ができます。
JPEGでも微調整したいと願うときには十分な効果があるソフトです。
優れたところと限界なところをサンプル撮影の作品を通じて分析していきます。
サンプル画像はあじさい以外は滋賀県の信楽駅周辺にて行いました。あじさいは自宅の周辺です。
この製品紹介はA8.netでの商品プレゼントに応募して、当選し、頂いたものです。つまり、市川ソフトラボラトリー(a8.net経由)提供のサンプルプロダクトによるものです。
製品概要
SILKYPIXは長い歴史を持つ国産のRAW現像ソフトとして知られているのですが、この製品はJPEG現像をレタッチすることに特化した現像ソフトです。
JPEGをレタッチするというどちらかというと珍しい分野のソフトです。写真をRAWで取るという以外の方でもレタッチをしたいという方には向いてるようです。
商品紹介で特徴として、真っ先に書かれてるのは、
「SILKYPIX RAW Bridge」機能により16bit(65,536階調)へ自動で拡張し、RAWデータに近い状態にして調整すること・・・グラデーション豊かでトーンジャンプが発生しにくい
SILKYPIX JPEG Photograpy 10 公式紹介ページ
とあるように、階調表現に自信があるソフトということが伺いしれます。
ソフト全体の機能を紹介するのは難しいのですが、私が利用する範囲でなるべく広く機能を使ったものを用意してみました。
公式サイトの例でも空と地上の画像を使われていますが、僕も空と地上の含んだ画像でサンプルを用意しました。
機能のテスト
階調表現
これが処理前と処理後の比較です。説明は書かなくても違いが明確に現れています。
雲の階調表現が結構細かいところまで表現できるようになっていますが、このような表現のところにSILKYPIX RAW Bridgeのエンジンの組成の良さが出てるように考えてます。
この写真は階調表現をテストするのに最適な、夏至ぐらいの少し曇りがある真昼の撮影なのです。
このような条件のときは適正露出が草のところと空のところで違いが大きいので、レタッチしたくなるところなのです。
カメラの測光はCanon 80Dの評価測光をそのまま当てはめたものです。現像処理後は階調表現の限界を見たいということもある。
だから、夏至の頃の強い日差しには見えずにどちらかというと晩夏の秋前の昼みたいな季節感になってることは現像をいじりすぎという感じまで行っています。
処理は上記の画像に表しています。ここでわからないのはSILKYPIX JPEG Photography 10の自動調整を行ったあとの処理です。
お空のところは少し彩度と明度、コントラストを操作しております(左、画像のマスク部分)。また、全体的に、草の緑を強調し、お空の青を強調するようにトーンカーブ(右)を細工しております。
傾き補正・デジタルシフト
これは自動調整後に傾きを補正しています。さらに、デジタルシフト補正でカメラの上下左右に関連するシフト補正機能を使って調整をしています。
さらに、薄い電線、マンホールや建物後ろの掲示板?を消して、視聴者の目先に邪魔になるものを消してあります。これはスポッティングツールのところで後に検証します。
だから、処理後のほうが全体的にスッキリしたものに変化しています。
傾き補正、シフト補正を調整しているために、建物の縦線は垂直になっています。
パースが効いた建物の写真に変わっています。遠近法の中でも2点透視法の例のような見え方の写真になっているのです。
ほんのちょっとした処理でJPEG写真でもこのように変化してしまうのです。
傾き・デジタルシフト補正利用のコツ
コツは垂直、水平とそれにマッチする縦ラインや横ラインを生かす事で美しく仕上げて立体感が明確になっていくように注意します。
調整がうまく行けば3D CGや建築物の絵のような建築パースが効いた画像ができます。
スポッティングツール
これは信楽焼ミュージアムの右の写真の建物の奥ところです。オリジナル画像ではここに白い掲示板(看板?)があって目立っていたところです。
見てるものにとって、ノイズになるという判断で消すついでにこのソフトでどこまで扱えるかチェックしています。
このように大きく拡大すると限界があります。ポールがスッキリしていません。画像がこれでも成り立つのは目立たない場所だからです。
これはスポッティングツールは画像の一部を円内でコピーする機能はあるけど、矩形内をコピーする機能がないからです。
基本的にこのくらいの処理をするときはJPEG(RAW)現像ソフトで扱うよりもPhotoshopやGIMPといった画像処理をするソフトの範疇だと考えてください。
つまり、スポッティングツールの範疇を超えた処理ってことです。
正規な利用方法は次の例で示しておきます。
この例はあじさいの写真です。あじさいの葉に虫食い穴が中央と右の紫陽花の右側の葉っぱに1つずつあります。また右側の虫食い穴の下には木漏れ日が1つあります。
わかりにくければ、クリックやタップで大きくして確認してみてください。特に中央の虫食い穴はあじさい2つの次に目につくものです。
このような虫食い穴や虫食い穴の木漏れ日はスポッティングツールで簡単に修正できます。修正したために処理後の画像から”雑味”が消えています。
この画像では、自動処理後あじさいが対角線上に適度に来るようにトリミングなど行っています。
そのために未処理の写真より処理後のほうが写真として力強さ明確さが出てきています。
スポッティングツール利用のコツ
ちょっとした邪魔な部分を整理するのには使えるが、大きなものを整理するためのものではない。
写真全体を見て、目立つ修正したい箇所に優先順位をつけて、一番目立つものから処理を考えると良いです。
効果的に修正できるところは修正箇所の周辺がピントが少しボケ気味になって色の変化が少ない部分です。
ホワイトバランス調整
これは単純に自動調整後、傾き補正で水平を出して、陶器の味と暖かさが出たほうがいいと思ったので、ホワイトバランスを温かみのあるものに微調整させております。
これだけで、画像の見た感じがかなり変わります。
その他
残りSILKYPIX JPEG Photograpy 10で処理したたぬきの写真を2つ紹介します。
こちらは自動調整後トリミングをして、三角構図をより対称的に見えるようにしてる。
さらに、シフト補正(上下)をつかって、後ろのたぬきの目力の強い箇所を意識して調整しています。
これもちょっとした調整ですが、写真が見違えるように力強くできるのです。
この画像については、自動調整後オリジナル画像を見て、光が強くあたった草むらが目立ちすぎるので、部分補正ツールで輝度を下げています。
草むらの輝度を下げることでたぬきのほうが目立つようになっています。
たぬきを目立たせるという優先順位を上げるための処理をしております。
処理後に気がついたのですが、右側のたぬきの間のコンクリートにあたっている強い光の処理が必要だったかな?というのと、
部分補正のところももう少し工夫が必要だったかもしれません。
この記事のアイキャッチ画像の信楽焼の陶器は信楽焼ミュージアム(撮影可)の展示ものです。
処理はSILKYPIX JPEG 10で行い、文字入れ装飾はPhotoshopで行っています。web画像ならばJPEG画像でもちょっとした処理をしても崩れないということです。
信楽焼のディテールがわかると思いますが、この画像は軽量化するためにJPEGで圧縮率高めです。
2400万画素のCanon EOS 80Dを利用していますので、web画像くらいのサイズに落とすことくらい問題がないということも影響してると思います。
小さなサイズのJPEG画像では当然不利ですからね。
ここで利用してるサンプル作品はCanon EOS 80DとEF-S 18-135mm USM, EF-S 35mm macro STMを利用して作成しています。
オリジナル画像の撮影から、カラーシステムはsRGBではなくadobeRGBを指定して使っています。色の範囲が後者のほうが広いからです。
性能面の総合評価
このようにいくつかサンプルを作っていますが、JPEG画像を微調整するというくらいならば、十分すぎる機能があることを示せたと考えています。
速度的には処理環境は Ryzen 3700x + GTX 1660(6GB) + 32GB RAM です。RAW処理でも十分なもので、このシステムくらいなら2400万画素の処理は十分こなしてくれます。
利用メモリ・RAM
これまで示した画像で利用していたメモリをWindows10のタスクマネージャーで確認していましたが、5GB以内に収まっていました。
だから、利用環境は16GBもあれば十分実用的と想定できます。ただし、スポッティングツールを多用すると32GBでも足りなくなる。
限界を超えたスポッティングツールの使い方には注意しましょう。
利用時のRAMの状況もチェックしていますが、私のRAM: 32GB環境で行っていて、それぞれの環境で違いが出ることは前提で理解をお願いします。
処理速度・CPU
処理速度については、Ryzen 7 3700xでは十分な速さなのですが、ところどころぎこちなくなるところがありました。おそらくRyzenへの最適化は不十分なんじゃないか?と想像しています。
- スポッティングツールの多用
- 角度補正、シフト補正
この辺の処理は重い目になりますね。i3やCeleronといった軽量級のCPUでは厳しいかもしれません。
ハード面のその他
ほか気になったことは、起動時間です。遅いです。Ryzenに関する最適化の問題なのか、それ以外なのか想像つかないです。
Intel CPUで同種の問題が起きてるのかは判断しかねます。
この問題はアップデートを待つしかないかもしれません。また、利用時はソフトをクリックして起動したら、一旦席を離れてトイレ時間やティーブレイクを挟んだほうがいいです。
上位のソフトでも公式FAQで起動が遅い項目があるので関連はしているかもしれません。
ユーザーインターフェース
UIの使い勝手は、使い始めて違和感なく利用できました。lightroomなど他のRAW現像ソフトを扱ってるのなら、戸惑うことはなかったです。
だからインストールして数日で撮影から現像処理まで行えました。
おまけ
RAWとの比較も考えたのです。
利用カメラEOS 80DではJPEGとRAWを同時記録はできるが、出てきた2つの画像に色分布に既に差があったです。
だから比較してないのです。
まとめ
このソフトの価格帯を考えると十分な機能を持っていて、JPEG画像を整えることが可能だと言えます。基本機能は十分です。
今回はアーティスティックな表現には取り組まなかったですから、その面の評価はここでは触れていません。
優れた点
- 階調表現はソフトのエンジン「SILKYPIX RAW Bridge」の効果を感じる
- JPEG処理としては簡単な処理ならば美的表現は十分残せてる
- UIは使い慣れやすい
- 価格帯とターゲット層を考えれば機能十分
- オリジナルJPEGからの劣化は気にならない
悩む点
- 起動時間が遅い
- 非力なPC環境では厳しい
大まかな感想は上記の箇条書きのようです。このソフトでどのくらいの処理ができるかはこの記事に載せたサンプルで十分わかるように配慮しました。
画像処理に関するものというのはどのようなものでも非力なPC環境では厳しいので、なるべく上位のものを用意したほうがいいと思います。
起動時間が遅いというのが最大の弱点ですが、それ以外は価格帯を考えると十分満足できています。
このソフトの最大のウリは
JPEGの処理でも階調表現を十分活かせる
ということです。
最終更新日 : 2021-07-14
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